日本初の磁気浮上式鉄道!リニモ 東部丘陵線を旅する【乗車記&沿線案内】

愛知高速交通株式会社が運行する東部丘陵線はリニモの愛称で親しまれています。2005年の愛知万博を機に開通し、日本で唯一磁気浮上式のリニアモーターカーが走る路線として当時から注目を集めました。

愛知高速交通 東部丘陵線(リニモ)とは?

丘陵地帯を走行するリニモの車両

リニモは正式名称を東部丘陵線といい、愛知高速交通株式会社が運営している路線。名古屋市名東区の藤が丘駅から長久手市を経由して豊田市の八草駅まで8.9㎞を結ぶ磁気浮上式鉄道です。

リニモの歴史

もともとは名古屋市と隣接するものの、鉄道が走っていなかった長久手市の利便性向上のため計画された路線です。沿線は丘陵地帯になっており高低差があるため、当初から通常の鉄道ではなく、磁気浮上式のリニアモーターカー路線として検討されていました。長久手市が日本国際博覧会『愛・地球博』の会場に決定したことで、会場アクセス路線としての役割を担うことになり、開幕に合わせた2005年に開業しました。

国内唯一の磁気浮上式リニア

開業からすでに15年以上経っていますが、設備や車両はまだまだ近未来的に見えます。

リニモ最大の特徴は磁気浮上式リニアモーターカーが実用されていること。磁気浮上式とはその名の通り、磁力によって線路から浮いた状態で走る車両のことで、現在建設中のリニア中央新幹線もこれに当たります。リニアモーターカーにもいくつかの種類がありますが、磁気浮上式で営業運転しているのは国内でリニモだけなんです。

無人運転のため乗務員はいない

そのほかリニモでは、ATOによる自動運転やフルスクリーン型のホームドアが全駅に設置されているなど新交通システムらしい設備が整っていています。通常の鉄道とはまた違った味わいがリニモの魅力でもあります。

リニモ全線乗車記

起点・藤が丘駅

市営地下鉄東山線は藤が丘駅が終点

リニモの起点は名古屋市東山区の藤が丘駅。

藤が丘駅は長らく名古屋市営地下鉄東山線の単独終着駅でした。東山線は名古屋市街地と市内東側の郊外を結ぶ路線。リニモは藤が丘駅からさらに東側にある長久手市を結ぶために建設されました。ちなみにリニモには駅が9つありますが、起点の藤が丘駅と終点の八草駅以外はすべて長久手市内に駅があります。

リニモの藤が丘駅は地下にあります。

地下1階がコンコースがあり、ホームは地下2階に位置しています。雰囲気はまるで地下鉄の駅のよう。ちなみに、地下鉄東山線の藤が丘駅は高架駅なので、乗換えには多少時間がかかります。

藤が丘駅の駅名標

ホームは島式1面2線の構造で、どちらのホームからも列車が発着。

電車待ちの時間に気になったのは、簡単な図形で構成されたシンボルマーク。リニモでは各駅ごとにシンボルマークがデザインされていて、可愛らしいです。駅ナンバリングは全国で普及しましたが、シンボルマークを作っている路線は珍しいのではないでしょうか。

出発後しばらくは地下トンネルを走行

ホームで待っていると、折り返しの列車がやってきました。

リニモの車両は3両固定編成。自動運転を行っているので、乗務員はいません。先頭車両の前面はガラスを多用したデザインになっているので、視界も良好。せっかくですから、先頭の座席に座って前展望を楽しむことにします。

はなみずき通駅~芸大通駅

最初の停車駅は はなみずき通駅

藤が丘駅を出発すると、しばらくはトンネル内を走行します。すぐに市境を跨いで名古屋市から長久手市へと入ると同時に、地上にある愛知県道6号力石名古屋線に沿って走行していきます。

トンネルを抜けて地上に出ると、最初の停車駅であるはなみずき通駅に到着。

駅を出ると、すぐに90度近く方向転換をしながら高度を上げて県道60号を跨ぐように高架橋に躍り出ました。先ほどまで道路の地下を走行していたのに、気が付けば逆転して道路の真上を走っています。走行リニアモーターカーは通常の鉄道よりも高低差や急カーブに強いため、車窓の変化も大きくて面白いですね。

しばらくのあいだ、県道6号線の真上を跨ぐように走行していきます。

長久手古戦場駅と遠くに見えるトヨタ博物館

次の杁ヶ池公園駅長久手古戦場駅付近までは市街地になっていて、沿道には商業施設が立ち並んでいます。杁ヶ池公園駅にはアピタ長久手が、長久手古戦場駅にはイオンモール長久手が直結していて便利そうです。ちなみに長久手古戦場は「小牧・長久手の戦い」の主戦地として知られており、古戦場公園として整備されています。

長久手古戦場駅を過ぎると、沿線丘陵地帯の趣きが感じられるようになり、路線も上り勾配がきつくなってきます。トヨタ博物館の巨大な建物を横目に見ながら、芸大通駅に停車します。愛知県立芸術大学に通じる芸大通りとの交点に駅があります。また、トヨタ博物館の最寄り駅です。

芸大通駅~愛・地球博記念公園駅

有料道路との立体交差

県道6号線の真上を走行してきたリニモですが、芸大通駅の手前で道路の右側に逸れます。それと同時に名古屋瀬戸道路の高架橋が割り込んで県道と合流する立体的な構造です。

沿線はまだまだ開発途中

ここから陶磁資料館南駅の手前まで、リニモの高架線は県道に沿うような形で敷設されています。市街地区間も終わって、ここからは傾斜の多い丘陵地帯の区間。周辺には丘陵地帯の緑が多くなり、沿線には開発途中の空き地もちらほら見受けられます。

次の公園西駅は愛・地球博記念公園北西ゲートに近いことから名づけられています。公園利用する場合はメインゲートのある愛・地球博記念公園駅が便利なようです。駅からすぐの場所にIKEA長久手があります。

上り列車とのすれ違い

ちなみに芸大前駅の標高は海抜97.4m。二つ先の愛・地球博記念公園駅は海抜152.7mということで、3㎞弱で50m以上もの高低差がある区間です。通常の鉄道ですと根を上げてしまいそうな急傾斜ですが、浮上式のリニモはすいすいと上り勾配を登っていきます。

公園西駅を過ぎると、右手に愛・地球博記念公園の敷地が見えます。緑豊かな公園を横目に丘陵地帯を駆け上がっていくと、徐々に視界が開けてきました。

標高も高くなり、周囲には視界を遮るものがほとんどありません。公園西から愛・地球博記念公園駅までの区間はリニモからの車窓で一番のハイライトではないでしょうか。逆に藤が丘行きの先頭車両に乗れば、眼下の市街地を眺めることができるので楽しそうです。

愛・地球博記念公園駅に到着

上り勾配を終えると、愛・地球博記念公園駅に到着です。

2005年の日本国際博覧会「愛・地球博」のメイン会場の最寄り駅として設計されたこともあって、リニモではもっとも大きな駅になっています。上下線で異なるホームと、中央にもう1本線路がある2面3線構造です。万博期間中はさらに両側に仮設ホームが設けられていたのだとか。

万博閉幕後に跡地は愛・地球博記念公園(愛称:モリコロパーク)として開放されており、沿線で1番の観光名所となっています。2022年からは園内にジブリパークが順次開園することもあり、今後はリニモ利用者も増えそうな予感です。

愛・地球博記念公園駅~八草駅

愛・地球博記念公園駅からの眺め

愛・地球博記念公園駅のホームからは、名古屋市街地が一望。東山公園にある東山スカイタワーや名古屋駅前のJRセントラルタワーズも肉眼で確認することができます。

訪れたのは冬の間でしたが、緑の綺麗な時期はもっと眺めがよいのではないでしょうか。

駅を出発してもまだ上り勾配は続きます。

しばらくは右手に愛・地球博記念公園の敷地が続きます。一方で左手に見えるのは愛知県立大学や知の拠点あいちのキャンパスや施設。リニモ沿線には教育・研究機関が多いのも特徴です。

そういえば、多摩丘陵を走る多摩モノレールも沿線に大学が多かったですね。

終点の八草駅が近い

陶磁資料館南駅はリニモでもっとも標高の高い駅。

駅の少し手前で車庫への分岐点があり、それを過ぎると久々に県道を跨いで駅に進入。駅舎は県道の上に設置されており、標高は海抜176.2mとなっています。

駅周辺は山深い丘陵地帯の趣きで、沿線で一番静かな雰囲気かもしれません。駅名になっている愛知県陶磁美術館は当駅が最寄り駅。とはいえ丘陵地帯の1本道を600mほど歩いた場所にあるようです。

愛知環状鉄道と接続する八草駅

次が終点の八草駅

県道6号線の八草ICを眺めながら、終着駅に到着します。愛知環状鉄道との接続駅で、線路が交差する付近に駅が設置されているため乗り換えには非常に便利な構造になっています。

八草は鉄道路線と主要道路が交差する交通の要衝ですが、山林が東西から迫る自然豊かな場所。近辺には駅施設とインターチェンジがあるほかは、一軒のコンビニがあるだけでした。


さいごに

全長8.9㎞のリニモの旅もこれにて終了です。日本で唯一の浮上式リニア鉄道という珍しさももちろんのこと、地下を走ったり急勾配の高架線を走ったりと変化に富む車窓も魅力的です。沿線には自動車や陶磁器、古戦場といった愛知の歴史や産業に触れることのできる観光名所も点在しているので、途中下車の旅もおススメです。