日本唯一のガイドウェイバス!ゆとりーとラインを旅する【路線&歴史】

ゆとりーとライン車両

名古屋ガイドウェイバス株式会社が運行するゆとりーとライン。大曽根駅を起点に都市部では専用高架線を、郊外部分では一般道路を走行する日本で唯一のガイドウェイバスとして知られています。

ゆとりーとラインとは?

路線バスのような車両

ゆとりーとラインは名古屋ガイドウェイバス株式会社が運営しているバス路線。ガイドウェイバスと呼ばれるシステムを国内で唯一採用していることで知られています。簡単にいえば、専用軌道を半自動運転で走行する路線バス。21世紀に入って増え始めたBRT(バス・ラピッド・トランジット)に似ていますが、軌道法に基づいて建設されているため鉄道に近い扱いです。

ガイドウェイバスのしくみ

ガイドウェイバスは専用走行路を走るバスのことを指します。イギリスやドイツなど欧州では実例がありますが、日本ではゆとりーとラインのみ。車両は通常の路線バスに似ているものの、専用軌道に設置されているガイドレールに車体に取り付けられた案内輪をトレースさせながら走行するので、限りなく鉄道に近い輸送サービスです。1台当たりの輸送力は路線バス並みですが、鉄道のような定時運行や増発が可能な点がメリットです。

ゆとりーとラインの路線

名古屋ガイドウェイバス株式会社HP 参照

ゆとりーとラインは名古屋市北部を走る路線です。

起点の大曽根駅から名古屋市守山区を縦断するように走ります。ちょうどJR中央本線と名鉄瀬戸線に挟まれるようなかたちで、名古屋都市部から郊外に向かって路線が伸びています。都市部と郊外のベッドタウンを結ぶ通勤路線としての性格が強いです。

市街地は専用軌道を走る高架区間、郊外では一般道路を走行する平面区間に分かれており、基本的には直通運転を行っています。平面区間ではいくつかの系統に分かれていてるため、同じ路線でも行先や経由地が異なる点が特徴です。運行本数は日中10分間隔ですが、通勤時間帯を中心に本数が増えます。特に高架区間の朝8時台は3分間隔という高頻度での運転を行っています。

  1. 大曽根~小幡緑地
  2. 大曽根~中志段味
  3. 大曽根~中志段味(サイエンスパーク経由)
  4. 大曽根~高蔵寺

設備は鉄道、実態はバス

ゆとりーとラインの駅

ゆとりーとラインの大曽根駅から小幡緑地駅までの6.5㎞は高架区間です。正式名称を中志段味線といい、この区間がガイドウェイバス方式になっています。軌道法という路面電車やモノレールに適用される法律に基づいているため、駅舎や高架橋などの設備は鉄道と同等。一方で、車両は平面区間と呼ばれる一般道路も走行できるように、車体の規格などは路線バスと同じ基準で設計されています。そのため、ハード面は鉄道ですが、運行形態などソフト面はバスに近い感じですね。

小幡緑地駅の先で地上に降りる

高架区間は走行路の側面にレールが敷かれていて、車両に設置された案内輪をレールの内側にトレースしながら走行します。案内装置の誘導で走行することができるため、ハンドル操作なしの半自動運転が可能になっています。ただ、ゴムタイヤで走る一般的な案内軌条鉄道(AGT)との違いは、車両が自動車であること、そして必ず乗務員が乗っている点でしょうか。

一方、平面区間では一般道路を乗務員のハンドル操作により運転します。高架区間の終点である小幡緑地駅付近には、モードインターチェンジと呼ばれる施設があります。ここで車両装置や運転方式の切替えを行うことで、直通運転が可能になっています。

なぜガイドウェイバスなのか

ゆとりーとライン車両

ゆとりーとラインの開業は2001年3月23日。鉄道空白地帯になっている名古屋市守山区志段味地区と都市部を結ぶ交通機関は1980年代から計画があり、1994年に名古屋ガイドウェイバス株式会社が設立。名古屋都市圏は浮上式リニア鉄道を採用したリニモや一般道路を改良した基幹バスなど、新交通システムの実用化が盛んなエリア。路線バス以上、鉄道未満の輸送力のある交通システムを模索し、既存のバス路線との互換性を考慮した結果、ガイドウェイバスという方式が採用されました。

名古屋ガイドウェイバス株式会社HP 参照

バス規格であれば一般道路にも車両が乗り入れることができるので、道路混雑の少ない郊外では専用軌道を建設しなくても済みます。また、平面区間では一般道路を走るのでルートの追加や変更なども柔軟に対応できることが理由のひとつでした。沿線の発展次第では高架区間の延伸や輸送力の高い新交通システムへの改良なども視野に入れていたようです。

萬代橋ライン
新潟市街地を走行するBRT、萬代橋ライン

開業から20年が経ち、この地に馴染んできたように見えます。ただ、ガイドウェイバス自体は結果として日本には浸透しませんでした。

似たようなシステムとして、都市部ではBRTやLRTなどが主流となっています。これらは道路や路面電車といった既存のインフラなどを最大限活用している点が特徴で、柔軟性が高いシステムはもちろんのこと、少しでも費用を抑えるという点がポイントになってきているように見えます。

ゆとりーとラインの旅を楽しむために

ゆとりーとラインは国内唯一のガイドウェイバスなので、乗り物好きであれば一度は乗ってみたい路線です。高架区間はアップダウンもあり眺望にも優れ、名古屋郊外の車窓を楽しむことができます。

乗り方と攻略法

ゆとりーとライン攻略には欠かせないJR中央本線

ゆとりーとラインに乗車する際は起点の大曽根駅からがおススメ。始発駅ですので、事前に並んでいれば必ず座席に座ることができます。名古屋駅からは、JR中央本線または市営地下鉄名城線で1本です。

ガイドウェイバスの高架区間のみ乗車したい場合は、小幡緑地駅で下車して折り返してくる方法もあります。ガイドウェイバスから路線バスへ切り替えるモードインターチェンジを体験するのであれば、その先も乗車することをおススメします。小幡緑地駅から先は3系統に分かれます。毎時2本程度運行している「高蔵寺行き」に乗車すれば、折り返すことなく、高蔵寺駅からJR中央本線と愛知環状鉄道に乗り継ぐことも可能です。

車内精算のため駅に自動改札機はない

バスは中乗り、前降りで降車時に運賃を支払う後払い方式です。支払いには現金のほかSuicaをはじめとした交通系ICカードも使用できます。ICカードの場合は乗車時にもタッチが必要です。また、ゆとりーとラインでは1日乗車券は販売されていません。

ゆとりーとラインの沿線と観光

公式名古屋ガイドウェイバス 参照

ゆとりーとラインは市街地と郊外の住宅地を走行するため、沿線の観光資源には乏しい印象。

ただ、リニモ城北線と同様に高架区間が多いため、車窓からは名古屋郊外の街並みを眺めることができます。特に白沢渓谷~小幡緑地駅間は丘陵地帯を走行するため、特に眺めのよい区間です。ゆとりーとラインの公式youtubeでも車窓を公開しています。

ゆとりーとライン沿線の観光名所
  • バンテリンドーム
  • 白沢渓谷(城土公園)
  • 小幡緑地 本園
  • 松洞山大行院 龍泉寺
  • 龍泉寺の湯 名古屋守山本店
  • 東谷山フルーツパーク
  • 歴史の里しだみ古墳群

駅から近い観光名所としては、小幡緑地駅の駅名にもなっている小幡緑地があります。芝生広場や野鳥園のある広大な自然公園です。次の竜泉寺口バス停には熱田神宮ともゆかりの深い古刹・龍泉寺、竜泉寺バス停には元祖スーパー銭湯としても名高い竜泉寺の湯の名古屋守山本店があります。竜泉寺の湯は丘陵地帯の高台にあるため、平野部を見渡すことのできる展望露天風呂が人気の施設です。

ゆとりーとラインの公式サイトでも、沿線の名所や施設を紹介しています。