山頂から薬王院へ



さて,山頂付近で昼食のお弁当を楽しんだあとは,ゆっくりと下山しましょう。
下りのルートは1号路。
時間もあるので,紅葉スポットをゆっくりと楽しみながら進みます。
まずは,山頂に向かう時にも参拝した薬王院の境内まで戻ります。昼下がりの時間帯は境内各所に植えられた木々に西日が当たって鮮やか。特にこの日は天気も良かったので,もみじの葉が燃えるような赤色をしていました。

和合歓喜天を安置する小さなお堂の周辺は特に紅葉が綺麗でした。
ここに祀られている歓喜天とは,仏教における天部のひとつで,本来はヒンドゥー教由来の神様。象の頭に人間の身体をした双体の造形をしていることが多く,その姿は滅多に目にすることができません。ご利益なども諸説ありますが,江戸時代ごろに民間で歓喜天信仰が流行したこともあったそうですよ。
境内にはさまざまなお堂や社がありますが,このようにほかの場所ではあまり見かけることのないような神様仏様も祀られているので興味深いです。



境内も午前中よりも落ち着いていて,本堂の飾られている天狗の絵馬や建築の細部までじっくりと見て回ることができました。
本堂から階段を下りて,授与所に行けばお守りや縁起物がずらりと並んでいます。もみじ札と呼ばれる交通安全と身上安全のお守りや,天狗のマスコットがつ付いた天狗守などは,ここ高尾山でしか買い求めることができません。
御朱印帳も薬王院限定装丁のものが販売されています。表面に天狗,裏面に紅葉があしらわれたオリジナル御朱印帳は2種類あり,シンメトリーになっているところが憎らしいデザイン。どちらも欲しくなってしまいます。また紺色,の下地に紅葉がプリントされた控えめなデザインの御朱印帳も販売されていました。
近年の御朱印ブームもあり,御朱印を頂く際には待ち時間が発生するので,もらう予定のある方は時間に余裕を持っておくと安心です。

境内を山門のほうへ歩いていると気になったのが権現力ソフトクリーム。
喫茶小房一福というお店で,ソフトクリーム自体も気になるのですが,お店の周辺に飾られている天狗のキャラクターがとても可愛らしいのです。天狗に誘われて,1つ購入。


ソフトクリームは薄紫色で,ぶどう酢を使用したほんのり甘酸っぱい味。
後味も爽やかで,美味でした。同じくぶどう酢を使用した力水は
高尾山限定の味なのでちょっとした休憩にもおススメ。十穀力団子と呼ばれる10種類の具材を練りこんだお団子も名物のようです。店頭で焙られているのを見ているとついついお腹が減ってきてしまいます。
賑やかに並んでいる天狗のキャラクターたちもぜひ商品化していただきたいですね!
薬王院から金毘羅台へ



薬王院を出る前にもう1ヶ所だけ寄り道。
登山路になっている薬王院の中心部から少し離れた場所に,ひっそりと弁財天の祀られた洞窟があります。以前に何かの書籍で紹介されているのを読んで気になっていました。
本堂に向かう階段下から,人気の少ない客殿の方へ向かいます。あまりにも人がいないので不安になりますが,諦めずに進んでいくと,お寺の建物の裏側と山肌に挟まれた場所にぽっかりと小さな穴が空いています。
ここに祀られているのは福徳辨財天。つまりは武芸上達や商売繁盛の信仰を集める七福神のなかのひとりである弁財天様の洞窟です。内部にも入れるようなので,参拝をします。
入口からすでに膝を折って腰を屈めないと進むことができないほど天井は低く,岩肌が剥き出しになっています。内部は少し左にカーブした先に弁財天が祀られています。短い洞窟ですが,格子の先に深い闇を湛えていて,もっと深くまで続いていそうな雰囲気です。
そう言えば,富士山麓の洞窟や江ノ島岩屋でも実は何処か別の場所に繋がっているなどという伝説が語られておりましたっけ。それほどにまで洞窟というのはミステリアスな存在なのですね。賑やかな高尾山とは思えない独特な雰囲気が漂う場所でした。

ゆっくりと散策していたら,だんだんと日が傾いてきたので,少しペースアップして進みます。帰りはずっと下りなので,登りほどの苦労はありませんが,階段のない坂道は意外と歩きづらいです。1号路は薬王院から先,山麓の清滝駅まで道路はすべてコンクリートで舗装されています。
行きに合流した霞台を過ぎて,下山する観光客で混雑したケーブル駅を横目にどんどんと下っていきます。
リフトの山上駅を過ぎるころから,道の傾斜がキツくなり始めます。勢い余って早足になってしまいそうですが,足に負荷がかかるので気をつけながら進みましょう。

途中,少し横路に逸れたところに金毘羅台と呼ばれる景勝地があります。
下りの1号路では最後の眺望になるので,少し寄り道をしてみます。東の方角に開けた場所で,八王子市街や東京都心方面を一望することができました。街中でひときわ黄色く鮮やかな道は甲州街道の銀杏並木でしょうか。
柵に手作りの案内地図もあるので,あまり土地勘のない方でも今見えている方角や街を理解することができると思います。ベンチも数ヶ所に設置されていますので休憩にもちょうどいいですね。
金毘羅台を過ぎたら,あとはひたすら下るのみ。標高が下がってくると太陽は山影に遮られてしまうので,少し寒く感じます。最後の方は道が単調なので少し退屈にも感じられますが,左手に墓地が見え始めたらあと少し。車止めと非常時に開閉される門扉を抜ければ,朝にも訪れたケーブルの清滝駅前に到着します。

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