東海交通事業 城北線の小田井駅は4層構造の高架駅。東海交通事業の本社が隣接しており、名鉄犬山線と名古屋市営地下鉄鶴舞線(上小田井駅)と乗り換えることもできます。

小田井駅は東海交通事業 城北線の駅です。
駅から徒歩2分の場所には東海交通事業の本社が立地しており、いちおう東海交通事業のお膝元の駅ということになります。本社内の鉄道事業部窓口では城北線の乗車券を購入が可能。ちなみに駅自体は、他の城北線の駅と同様に無人駅となっています。

城北線の駅は枇杷島駅を除いて高架駅となっていますが、そのなかでも小田井駅が最も規模が大きいです。
駅付近で名鉄犬山線と名古屋市営地下鉄鶴舞線の高架橋と立体交差するため、それを超える高架橋が建造されました。

小田井駅付近の高架橋は4層構造になっており、まるで城壁か要塞のよう。
ホームは地上4階相当高い位置に設置されているため、JRとの共同使用駅である枇杷島駅を除いた城北線の駅で唯一、エレベーターが設置されています。
巨大な高架橋と立派な駅構造とは裏腹に、ホームにやってくるのは1両編成の気動車。しかも、上下線毎時1本程度のローカル線です。このギャップに不思議な魅力を感じてしまうのは私だけでしょうか。



地上4階にあるホームは島式1面2線の構造。
他の駅と同様に列車が停車する場所のみ屋根が設置されています。
ホームの先端、枇杷島寄りにはエレベータが設置されています。エレベーター部分には屋根が付いていないので、雨の日は列車に乗るまでに傘をさす必要があります。

かなり高い位置にあるため、ホームからの眺めは良好です。
周囲には視界を遮るものはほとんどなく、名古屋市街地や遠く岐阜県の山々まで見渡すことができます。城北線は非電化なので、架線がないのでなおさらではないでしょうか。



駅は1階が出入口と駐輪場になっています。
駅入口からホームまでは階段だけではなく、2階と3階のフロアが設けられています。ただ、無人駅のため何も設置されておらず、ただ広い空間が広がっているだけ。3階の階段下にはプレハブの簡易的なトイレがありました。
エレベーターは途中階にも扉らしき構造は見受けられますが、現状は地上とホーム階のみ停車しています。
国鉄瀬戸線の遺構を活用

小田井駅の立派な構造物にはそれなりの理由があります。
城北線は国鉄瀬戸線の一部を引き継ぐかたちで完成しました。
瀬戸線は国鉄時代に貨物列車の名古屋都市部の迂回を目的とし路線で、途中から旅客化も想定して建設が行われています。貨物需要の減少や国鉄再建などの事情から未成線となりましたが、すでに建造物は途中まで完成した状態でした。
これらの構造物をJR東海が引き継いだのち旅客用に整備し、子会社の東海交通事業が運営しているのが城北線。ほとんどの区間(勝川~尾張星の宮駅付近)は瀬戸線用に建設された路線を活用しています。

小田井駅は当初、稲沢方面の貨物路線と枇杷島方面の旅客路線の分岐駅として計画されていました。
現在使用しているのは、すでに完成していた枇杷島方面のホームだと言われています。実は北側に同じような高架橋をもうひとつ建設し、2面4線構造の大規模な駅になる予定でした。駅のすぐ北側にある、高架橋沿いの駐車場が当初の駅用地です。
小田井駅からは稲沢方面と枇杷島方面の路線が方向別複々線で並走する想定だったのではないでしょうか。

現在は短いホームですが、10両編成が停車できるホームが造れるような設計になっています。高架下のフロアが広々とした造りになっているのは、自動改札機や駅窓口の設置が想定されていたのかもしれません。
小田井駅は名鉄犬山線と名古屋市営地下鉄鶴舞線の上小田井駅は距離が近いですが、公式には乗換駅扱いになっていません。瀬戸線が開通した場合には連絡通路を設けるなどして、乗換えが考慮された可能性もあります。
というように、小田井駅の不思議な構造は国鉄末期の遺構を引き継いでいたことが理由でした。訳アリの駅の歴史を紐解いていくのは史跡を探索するような面白さがあります。
また、「もしかしたら」の可能性に思いを馳せるのも一興です。



















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路線 :東海交通事業 城北線
住所 :愛知県名古屋市西区八筋町
開業日:1991年12月1日
訪問日:2014年1月6日
※画像はすべて訪問時に撮影したものです