旧名古屋鉄道美濃町線 美濃駅~大正期の駅舎が残る平成の廃駅~

美濃駅はかつて名鉄美濃町線の終着駅でした。駅は国の登録有形文化財として登録されており、廃線後の現在も駅舎や車両の保存・展示が行われていて見学可能です。

旧名古屋鉄道 美濃町線 美濃駅

美濃駅は名古屋鉄道美濃町線の終着駅でした。

名鉄美濃町線は、岐阜市街地から関を経由し美濃駅までを結んでいた路線です。1911年に美濃電気軌道が開業させ、のちの1930年に名鉄と合併して美濃町線となっています。同路線は利用客の減少により、2005年に廃線。末端区間の新関~美濃駅間は、全線廃線に先立って1999年に廃止されました。

現在では美濃町線沿線では往時の偲ぶ施設はほとんど失われてしまいましたが、美濃駅は国の登録有形文化財に指定されていることもあって、現在でも駅の一部は保存・公開されています。

駅舎は1923年に駅の場所を移転した際に再建されたもので、大正期の建築です。

濃尾平野の末端に位置する美濃市は美濃和紙の産地としても有名。

歴史ある町並みが残る市街地から、少し離れた場所に美濃駅跡があります。さらに町から離れた小高い場所に長良川鉄道の美濃市駅があり、こちらは現在も列車が走っています。

プラットホームはコの字型をした頭端式の2面2線構造。廃止後は外側にもう1線追加されて、2面3線のようになっており、美濃町線ゆかりの車両が静態保存されています。

現在は旧名鉄美濃駅保存会によって管理されているので、開館時は無料で駅舎やホームを見学可能。木造平屋の駅舎内には往時の写真や貴重な資料が陳列されていました。

以前、私が訪れた際は「美濃和紙あかりアート展」の開催期間中。

当時は特別に夜間開館しており、ライトアップされた駅は日中と異なる夜の雰囲気もまた味わいがありました。かつての軌道線のローカルな雰囲気と、終着駅の旅情に浸ることができる場所です。

美濃駅に展示されている車両

美濃駅には美濃町線で活躍していた車両が静態保存されています。

展示されているのは名鉄モ600形601号、名鉄モ510形512号、名鉄モ590形593号の3両。加えて、奥のプラットホーム上に名鉄モ870形876号の先頭部カットモデルがにちょこんと載っています。

外観は往時の姿を留めており、モ590形以外は名鉄らしい赤色の塗装が印象的です。

展示されている3つの車両からもわかる通り、美濃町線は軌道線と呼ばれる路面電車に近い路線でした。20㎞以上の路線距離を路面電車のような車両が結んでいたと思うと少し不思議な感じもします。

車体が縦に細長いのも軌道線独特のものです。

1番線に保存されているのは名鉄モ600形601号

モ600形は美濃町線では比較的新しい車両で、1970年に導入開始されました。美濃町線から田神線を経由して各務ヶ原線の新岐阜駅まで直通運転するために開発された経緯があります。

2番線に展示されている車両は名鉄モ510形512号

美濃電気軌道時代に導入された古参の車両で、1926年の製造です。丸みを帯びた先頭の形状は当時のアメリカの電車の影響を強く受けていると言われ、つぶらな前照灯や円形の戸袋窓など全体的にレトロで可愛らしいデザインをしています。

冷房車ではないにもかかわらず、2005年の廃線まで現役で走り続けました。

一番端に展示されているのは名鉄モ590形593号

1957年から導入され、美濃町線や岐阜市内線を走った車両です。外観は全国の路面電車でよく目にする形状。塗装が他の展示車両と異なるのは、廃線前に市内線の復刻塗装に変更されたから。晩年は1999年に廃止された新関~美濃駅間の運用に就いていましたが、一部の車両はとさでん交通に譲渡されて現役活躍しているそうです。

美濃駅の画像

 

美濃駅の情報

路線 :名古屋鉄道美濃町線
住所 :岐阜県美濃市広岡町
開業日:1911年2月11日
廃業日:1999年4月1日
訪問日:2017年10月7日
    ※画像はすべて訪問時に撮影したものです