JR鶴見線 国道駅を訪ねる~昭和初期の駅舎が残る無人駅~

鶴見線国道駅の通路

JR鶴見線の国道駅は、1930年開業当時の駅舎が現役で使用されています。高架下の回廊は昭和時代の雰囲気を色濃く残した首都圏では貴重な鉄道遺産です。

JR東日本 鶴見線 国道駅


国道駅は横浜市鶴見区にあるJR鶴見線の駅です。

鶴見線は戦時中に国有化される以前は、鶴見臨港鉄道という私鉄路線でした。そのような事情もあって、現在でもほかのJR路線とは少し異なった雰囲気を持っています。なかでも国道駅はほかに類を見ない個性的な駅舎があります。

国道駅の雰囲気ををひとことで言うならば昭和感。昭和初期に建てられた駅舎が、今も現役で使われています。

国道駅が開業したのは日中戦争が始まった1930年。

そろそろ開業から1世紀が経とうとしていますが、駅舎はほとんど当時のまま。乗降者数が少ないためか、建て替えや大規模な改修も行われず、一方で廃駅にもならず、絶妙に生き永らえてきた駅なのです。

旧東海道側にある北口 (2015)

新陳代謝の活発な市街地において、古くなった建築は壊されて新しくなることがほとんど。まして、東京や横浜市街地のような大都市は、太平洋戦争時の空襲で軒並み焼かれているので、昭和初期の建築は非常に珍しいです。

太平洋戦争を生き延びた証として、駅外壁の一部には機銃掃射の跡が残されています。

モダンで独特な駅舎が残る

駅構造は相対式2面2線のホームがある高架駅。

鶴見駅側では東海道本線や京急本線を跨ぎ、扇町側では鶴見川を渡るため、地上3階相当の高い位置にホームが作られています。高架下は改札口やトイレなどの駅施設と、屋内通路や集合住宅と一体化した構造になっています。

ゆるやかなカーブを描きながら続く高架下の通路。

2階部分が吹き抜けになっているため天井が高く、梁がアーチ状になっているのが御洒落です。この通路は国道15号側(第一京浜)と旧東海道側(生麦魚河岸通り)を結んでいて、通路の中間あたりに改札が設置されています。

自然光がほとんど入ってこないため、昼間でも薄暗くトンネルのような雰囲気。

壁面や地面も古びていて、まるで昭和にタイムトリップしたかのような感覚になります。

日中は人影もなく、廃墟と言っても差し支えないほど静か。

歩行者専用ですが、駅を利用しない人も通り抜けできる構造になっています。

通路の両側は店舗や住居の玄関口があります。

かつて改札前には商店と居酒屋が営業していたようですが、現在は閉店。住居も空き家や目立っているようで、ベニヤ板で入り口を塞いでいたりと、全体的に廃墟ような雰囲気。

吹き抜けになった2階部分には窓らしきものも確認できるので、住居内は2階建て構造なのかもしれません。

鶴見線は鶴見~国道駅のあいだで高架を走っています。

高架区間のほとんどは高架橋と住宅建築が一体化した構造になっています。高架下建築といえば、ほかに総武線各駅停車の秋葉原~浅草橋駅間や、山手線の東京~新橋駅間などが有名ですね。

改札から高架ホームへ…

肝心の駅構内ですが、改札は地上に1ヶ所。

開業当時は有人窓口がありましたが、1971年以降は無人駅。2022年に鶴見線全線で自動券売機が撤去されているので、現在はSuicaの簡易改札機のみ設置されています。改札口右側には窓口跡が残されています。

改札階とホームを結ぶのは階段のみ。

ホームは地上3階部分にありますが、エスレーターやエレベーターは設置されていません。2階部分まで登ると、踊り場があって、鶴見方面ホームへ繋がる通路が右に分岐しています。

階段をまっすぐ進むと浅野・大川方面ホーム。

駅スペースが限られているため、ホームに近づくと階段が狭くなるのが特徴です。

鶴見方面のホーム行くには、右に折れて渡り廊下を進みます。突き当りを左に折れるとホームまでの階段が続いています。

吹き抜けの通路の上に架けられた渡り廊下は天井が迫っていて少し窮屈な印象です。他のサイトの記事を見ると、開業当時はホームごとに階段と改札口が別々に設けられていましたが、改修により現在の構造になったようです。

ホームは3両編成が停車できる設計です。

出口階段のある中央部分のみ雨除けの屋根付きで、ホーム両端は屋根がありません。ホーム同士を鉄骨で繋いだ、かまぼこ型というかアーチ型の屋根が印象的。

国道駅の発着本数はデータイムは各方面で毎時3本。朝夕の通勤時間帯は各方面1時間あたり最大12本の列車が発着します。ローカルな雰囲気に似合わず、朝夕にはほぼ5分間隔で列車が到着しています。

国道駅の乗降者数は多くありません。データが古いですが、2008年の平均乗降客数は1日1,500人あまり。理由としては隣の鶴見駅まで距離が短いことや、徒歩5分ほどの場所に京急本線の花月総持寺駅があるためではないでしょうか。

路線が大きくカーブしている場所に駅があるため、車両の乗降扉とホームの間が広く空いてしまいます。階段やホーム壁面にも、その旨の注意喚起がされています。


国道駅や鶴見線を紹介している書籍はこちら

 

国道駅の情報

住所 :神奈川県横浜市鶴見区生麦5丁目
開業日:1930年10月28日
訪問日:2015年12月27日
    ※画像はすべて訪問時に撮影したものです