鎌倉 海蔵寺を歩く~不思議な十六井が残る寺院~

鎌倉では少し市街地から離れた閑静なお寺も魅力があります。

源氏山公園のふもとにある海蔵寺もそのひとつです。

花の寺、海蔵寺

室町時代に大いに栄えたそうですが、江戸時代ごろには現在の形になったと云われています。

鎌倉中心部や長谷といった観光コースからは少し外れているため、知名度は少し劣ります。しかし、長い歴史のある寺院のため境内には不思議な魅力を持った史跡が多く残されています。

海蔵寺山門

山門を潜ると境内には多くの草花が植えられ変化に富んだ風景を作り上げています。

境内はそれほど広くはありませんが、いくつかの建物があります。まずは中央に本堂、その左側に茅葺屋根の庫裡があります。本堂右手には薬師如来を安置した薬師堂が建っています。

本堂は関東大震災以降の再建で、薬師如来を安置する薬師堂は安永5(1776)年に北鎌倉の浄智寺から移築したもの。

海蔵寺薬師堂

本尊の薬師如来は、その胎内に土中から発見された仏面を収めていると伝えられ、「啼薬師」とも呼ばれています。
伝説をひも解くと、開山禅師が毎夜裏山から赤子の泣き声を聴き、探り当てた墓石から発掘された薬師如来の御顔であるといいます。

この仏面は秘仏となっていて、御開帳は61年に1度のみ。ハレー彗星並みの頻度ですね。

那須野の殺生石(栃木県那須塩原町)

開山禅師は、別名で源翁禅師とも言われています。

源翁は那須野にある殺生石の伝説にも登場する名僧です。平安時代に玉藻の前に化けていた九尾の狐は宮中を追われ、遠く那須野の地で討ち取られます。

その後、毒石と化した狐は後世に渡っても災いをなしていましたが、源翁の杖による一撃で石は破壊されたという伝説が今も残されています。

謎に満ちた十六の井

海蔵寺薬師堂

海蔵寺にはほかに、十六の井(十六井戸)と呼ばれる場所もあります。

見学の際は、境内にある赤い和傘の下に拝観料100円を奉納してから向かいます。

境内とは少し離れた場所にあるため、気を付けていないと見落としてしまうかもしれません。仏殿横の狭い路地を抜けて、素掘りの洞門をくぐった先にあります。

海蔵寺境内

素掘りの洞門がまた特徴的で、別の世界に誘ってくれるかのような雰囲気です。苔むした感じや植物に覆われつつある景色は鎌倉ならではかもしれません。

十六の井は岩肌に開いた岩窟のような場所にあります。

岩窟のなかに縦横に4つずつ並んだ円形の穴、ひとつひとつに水が溜まっています。現在も水が湧きだしているとのことから、この名で呼ばれています。

伝説によると弘法大使が掘ったとも言われ、岩窟の正面には聖観音立像が安置されています。

なぜ4×4という配置なのか、本当に井戸として造られたのか(納骨穴説)など様々な謎が残され解明するに至っていません。

海蔵寺やぐら

本殿横の崖にもやぐらがあり、鳥居が目に付きます。
ここでは銭洗弁財天と同じく、宇賀神を祀っているようでとぐろを巻いたお姿が印象的です。

鎌倉特有のやぐらのじめじめとした雰囲気が満ちた空間です。

海蔵寺の場所