東海交通事業 城北線を旅する③~枇杷島駅から勝川駅まで~

東海交通事業城北線は愛知県内の勝川駅と枇杷島駅を結ぶ鉄道路線。路線距離11.2㎞の短い区間をワンマン気動車が走る都会のローカル線として知られています。

東海交通事業 城北線乗車記

城北線の旅はJR東海道線の枇杷島駅から始まります。

起点となるのは勝川駅ですが、枇杷島駅からの方が乗り継ぎが便利なため、枇杷島駅から乗車。JR東海との共同使用駅のため改札内ですぐに乗り換えることができます。ここから城北線に乗車して、終点の勝川駅を目指します。

枇杷島駅 (愛知県清須市)


枇杷島駅があるのは愛知県清須市です。

東海道本線との接続駅で、東海道線は普通列車のみ停車。新快速や貨物列車などが頻繁に通過していきます。東海道本線の名古屋~稲沢貨物駅間は旅客線と貨物線が並走する複々線区間になっていて、城北線のホームは貨物線の線路に間借りするような形で設置されています。

枇杷島駅の城北線専用ホームは1・2番線。

気動車のみの運転のため、ホームは隣の東海道線に比べると短くコンパクトに仕上がっています。

枇杷島駅を出発する城北線の本数は毎時1・2本程度。

朝夜の通勤通学時間帯は毎時2本、それ以外の時間は毎時1本。名古屋市を通っていながら地、方のローカル線並みの運転本数です。ちなみに東海交通事業は車両を2両しか所有していないので、通勤時間帯でも増結はされずに1両で運転しています。

車両はキハ11形300番台が使用されています。

車内はセミクロスシーとで、車両中央部がクロスシートになっています。ワンマン化されているのでドアは押しボタン式。進行方向後ろ寄りのドアから乗車し、前方のドアから降車する方式です。

休日の日中に乗車しましたが、車内はガラガラ。
ゆったりとクロスシートに座っていると間もなく枇杷島駅を発車しました。

枇杷島~小田井駅間

枇杷島駅を出発すると、すぐに東海道本線と分岐して城北線専用の路線に入ります。分岐点は単線ですが、すぐに複線になって高架橋を上っていきます。徐々に高度を上げていくと、しばらく右カーブが続く区間。

東海道本線を跨ぎながら、北西から東へと方向を変えていきます。

架線がないので車内からの眺めは非常に良いです。

右カーブの途中に設けられているのが尾張星の宮駅です。

枇杷島を出発して最初の駅で、1991年当時は城北線の終着駅として暫定開業しました。遅れて1993年に枇杷島~尾張星の宮駅間が延伸開業しています。尾張星の宮駅は相対式2面2線の高架駅で、枇杷島駅と同じく清須市にあります。ホームは2・3両分の長さしかありませんが、駅前後は高架橋の壁面素材が異なっており、ホームの延伸を視野に入れているようです。

尾張星の宮駅を出発しても、まだまだ右カーブは続きます。

名古屋高速6号清須線を交差する地点で、いきなり上下線が分離します。

勝川方面の線路はさらに高度を上げていきます。

やがて枇杷島方面の路線が見えなくなりました。車窓からの眺めは愛知県内の鉄道路線でも有数の見晴らしではないでしょうか。近くに遮るものは何もなく、名古屋市街地や遠くの山々まで見渡すことができます。

一定の高さまで登りきると、右にカーブしながら高度を下げていきます。

下りきると枇杷島方面の線路と合流して元通りになります。

超芸術トマソンを彷彿とさせるような、無意味な高低差は何なのでしょうか。

この上下線分離ポイントは城北線の名所(迷所)のひとつ。

城北線は国鉄時代に計画された東海道本線稲沢貨物駅~中央本線勝川方面を結ぶ路線(通称:瀬戸線)向けに建設された施設を引き継いで開業しました。瀬戸線は貨物と旅客の両方を視野に入れ、途中で稲沢に向かう貨物路線と枇杷島に向かう旅客路線に分岐することが想定されていました。

その分岐ポイントの成れの果てが、この無意味な高低差です。高くなった路線の下を稲沢方面の路線が潜れるような設計にしていたのですが、建設中に計画が凍結されたため、無意味なものとなってしまったのです。

次の小田井駅が近づいてくると、周囲には集合住宅が増えてきます。

そして、名鉄犬山線と名古屋市営地下鉄鶴舞線と交差するために、高度を上げます。

高架線の上を高架線で跨ぐため、地上からかなり高い位置を走っています。

名鉄線と交差をするとすぐに小田井駅に到着。

ちなみに名鉄線と地下鉄線の上小田井駅とは少し離れていて、一般道を歩いて徒歩6~7分かかります。

小田井駅 (名古屋市西区)


小田井駅は地上4階部分にホームがある高架駅です。

ホームが高い位置にあるためエレベーターも設置されています。駅自体も高規格で造られており、ホームの延伸や2階3階フロアの拡張もできそうな設計です。瀬戸線計画では当駅が中核駅になる予定だったため、最大で2面4線の高架駅になることも考えられていました。現在ではただただ巨大な無人駅と化しています。

周辺には商業施設やバス停はなく、駅前一等地には月極駐車場と住宅地。近隣には城北線を運営する東海交通事業の本社があります。また、ホームからの見晴らしがよく、遠く名古屋中心部のテレビ塔の姿も望むことができます。

小田井駅~味美駅間

小田井駅を出発すると、徐々に高度を下げていきます。

しばらくすると、名古屋第二環状自動車道と合流します。

ここから終点の勝川駅手前までの間はずっと高速道路と並走します。

高速道路の楠JCTが近づいているので、高速道路は高度を上げていきます。

一方で、城北線の高架線は少しずつ低くないっいきます。少し右にカーブすると比良駅に到着。

比良駅は名古屋市西区に位置する相対式の高架駅です。

乗車時にはあまりわかりませんが、周囲は城北線沿線では一番自然豊かな場所。駅周辺には桜の名所として有名な蛇池千本桜、庄内川の増水時に新川へ水を逃す洗堰などが広がっています。

比良駅を出発すると、いよいよ楠JCTが近づいてきます。

楠JCTは並走している名古屋第二環状自動車道と名古屋高速1号と11号が十字に交差。高速道路は城北線の上を跨ぎながら立体的に交差していきます。

城北線はひたすら直線区間が続きます。

JCT区間が終わると、高速道路の高架橋も元の高さに戻りました。

ちなみに高速道路の下には一般道の名古屋環状2号線走っていて、上下の二重構造になっています。さすが自動車社会の愛知県といったところです。城北線は自動車の大動脈の隣を細々と走っている感があります。


路線が少しだけ右にカーブしていくと、味美駅に到着します。

味美駅 (愛知県春日井市)


味美駅は愛知県春日井市に位置する高架駅です。

隣の比良駅とは異なり、島式ホームです。この駅も小田井駅と同様にホームの延伸ができるような設計になっています。名鉄小牧線にも味美駅がありますが、直線距離で800km程度離れているため乗換え駅ではありません。

周辺は住宅地ですが、徒歩圏内には春日山古墳・御旅所古墳・二子山古墳という3つの古墳が点在しています。

味美駅~勝川駅間

味美駅を出ると、名鉄小牧線と立体交差します。

名鉄線小牧線も高架化されているため、高度を稼いで跨ぎます。名鉄の線路脇にある森が二子山古墳です。立体交差が終わると、終点の勝川駅が近づいてきます。

しばらく並走していた名古屋第二環状自動車道ともお別れです。城北線の高架橋は次第に低くなって、左カーブにしながらを高速道を潜ると勝川駅に到着します。

少し手前で線路は単線になって、ホームに滑り込みます。

勝川駅 (愛知県春日井市)


勝川駅は城北線の起点駅でもあり、今回の旅の終点です。

駅は単式1面1線の簡素なホームがあります。高架橋の末端部に駅が設けられているのではなく、ホームの先に車両の検修施設があります。いちおう、JR中央本線の勝川駅と乗換え駅になっていますが、500mほどの距離があります。

実は、現在の城北線勝川駅は仮設のもので、JR勝川駅に乗り入れる計画自体は存在します。JR駅には城北線が乗り入れられるようにホームや路盤は用意されているのですが、具体的な予定は立っていません。