近鉄のフリーパス「まわりゃんせ」を利用した伊勢志摩旅行記です。最終回の今回は伊勢市を拠点にして、お伊勢参りをします。外宮から内宮の順に巡っていきます。
2月26日日曜日、晴れ。
伊勢志摩旅行の最終日は、お伊勢参りをします。日本で最も有名な伊勢神宮ですが実は参拝するのは今回が初めて。伊勢市内を中心に多くの別宮や摂社がありますが、今回はそのなかでも有名な外宮と内宮に参拝をします。
伊勢市駅から出発

最終日の旅は伊勢市駅から始めます。
伊勢市の中心となる駅で、近鉄とJR参宮線が乗り入れています。伊勢市駅は外宮の最寄り駅なので、駅から徒歩で向かうことができます。駅前は思ったよりもこざっぱりとした雰囲気で繁華街ではありません。
駅前に鳥居があって、道なりに進むと外宮へ行くことができます。

駅前ロータリーからは外宮経由で内宮方面へ向かう路線バスも発着しています。
「まわりゃんせ」では市内を走る三重交通バスに乗り放題です。伊勢市街を走るバスのほとんどは伊勢交通バス。伊勢神宮と鳥羽方面を結ぶCANバスにも乗車することができます。
外宮は歩いて行けますが、内宮やおはらい町は駅から離れているので伊勢市内での移動は路線バスが基本。観光名所や主要駅のみ停車する急行バスも走っているので便利です。
・三重交通バス(路線バス)が乗り放題
・伊勢⇔鳥羽の観光地を結ぶCANバスも乗車可
・鳥羽市内では鳥羽市かもめバスも乗り放題
まずは外宮(豊受大神宮)へ参拝

伊勢市駅から外宮の入口までは徒歩で5分程度。
目の前の大通りから先は鬱蒼とした社叢が広がっています。

外宮は正式名称を豊受大神宮といい、豊受大御神を祀る神社です。
豊受大御神は衣食住や産業の神様として知られています。内宮に鎮座する天照大御神の食事を司る神として、この地に祀られています。伊勢神宮として有名なものは内宮と外宮ですが、お参りする時は外宮を先に参拝するのがならわしだそうです。
外宮の境内には中心となる正宮のほか、3つの別宮が鎮座しています。広大な社叢の緑に癒されながら参拝していきます。
木製の火除橋を渡るといよいよ目の前に一の鳥居が現れます。
左手に伊勢神宮の資料館である「せんぐう館」とまがたまの池を眺めながら森に入ると、参道はゆるく右にカーブして、授与所のある広い敷地に出ます。一番奥まで行くと外宮の中心地、御正宮があります。

ひときわ大きな御正宮は豊受大御神を祀る社殿。
豊受大御神は約1,500年前にこの地に鎮座していると伝えられています。内宮と同じく式年遷宮といって20年に1度社殿が作り変えられるため、隣には古殿地といって前回の式年遷宮まで社殿の建っていた空間がぽっかりと残されています。
前回の式年遷宮は2013年。歴史のある場所ではありますが、建築は定期的に立て替えられるため、とても綺麗に保たれています。ちなみに御正宮の鳥居の先は撮影禁止。拝殿の先に唯一神明造の本殿がありますが、いくつもの垣根に囲まれていて、その全貌を目にすることはできません。
御正宮に参拝をしたあとは、境内にある別宮にお参りします。
別宮とは正宮の次に格の高い神社で、外宮の別宮はすべてで4ヶ所。そのうち、多賀宮・土宮・風宮の3か所が境内にあります。それぞれ外宮にまつわる神様を祀っていますので、正宮参拝したあとにそれぞれ立ち寄りました。

まず、正宮に祀られている豊受大御神の荒御魂を祀る多賀宮。正宮から一番遠い高台に位置し、別宮の中では一番格式が高い神社です。長い石段を上り詰めた先に社殿がありました。
次に土宮と風宮。これらの神社は隣接して建っていますが、土宮は伊勢神宮が造られる前からこの地で祀られていた大土乃御祖神、風宮は風雨の神様である級長津彦命(級長戸辺命)が祀られています。
ちなみに別宮も式年遷宮を行いますので、社殿の隣には古殿地があります。
内宮(皇大神宮)へ参拝

さて、次に詣でるのは内宮。
外宮から内宮へは路線バスを利用します。外宮前バス停から内宮前行きのバスが頻繁に運行しています。所要時間は10分ほど。もちろん「まわりゃんせ」で乗車できます。また、休日であれば内宮までほぼノンストップの特急バスが毎時2本走っているので便利です。

内宮前のバス停で下車すると物産店や飲食店が立ち並ぶ観光地ならではの雰囲気。
比較的静かな外宮周辺と異なって、非常に賑やかな雰囲気があります。バス停から五十鈴川に架かる宇治橋を渡って内宮の御正宮を目指します。境内はかなり広く、森の中に入る前に広々とした神苑もありました。

内宮は正式には皇大神宮といい、天照大御神を祀る神社。
皇室の祖先(御祖神)を祀る内宮は日本国民の総氏神とされている、国内でもっとも有名な神社ではないでしょうか。数々の別宮や摂社を持つ伊勢神宮ですが、狭義的にはこの内宮を指している場合が多いです。
今から約2,000年前、垂仁天皇26年に天照大御神は当地に鎮座しました。時代を経て鎌倉時代以降になると伊勢神宮に参拝する「お伊勢参り」が浸透し、多くの人が訪れるようになったそうです。
外宮と同じく火除橋を渡ると、いよいよ森の中。
手水舎で手を清めますが、五十鈴川のほとりにも降りることができるので川の水で手を清めることができます。五十鈴川は水深も浅く、水も清らかでとても美しいです。

授与所を抜けてさらに奥に行くと、正宮があります。
ここが伊勢神宮の中心地、天照大御神を祀る聖域です。石段を上り詰めた先に鳥居があり、その先は撮影禁止。見ること叶いませんが、拝殿から先の社殿には御神体として三種の神器のひとつ、八咫鏡が安置されています。
休日ともあって周囲はかなり混雑していて、参拝を済ませたらすぐに引き返しました。
戻る途中の参道にも様々な社殿があります。
三節祭と呼ばれる祭礼で用いられる稲を納める御稲御倉や、奉納された幣帛を納める外幣殿など、どちらも高床式の建築です。伊勢神宮で用いられる神明造という建築様式をじっくりと眺めることができました。正宮は混雑しているのであまりじっくり見ることができなかったので。

正宮の奥に荒祭宮という別宮があったのですが、うっかり見逃してしまったのが残念です。
こちらの社殿には天照大御神の御荒魂が祀られています。内宮管轄の別宮は10ヶ所ありますが、その中もっとも格の高い神社です。次の機会には必ず参拝したいと思います。
境内にはもうひとつの別宮があります。
風日祈宮といって、級長津彦命、級長戸辺命の2柱が祀られています。外宮の境内にあった風宮と同じ神様を祀ってっています。農耕民族であった日本人が農作物の豊穣には欠かすことのできない風や雨をとりわけ重視していたことを伺うことができます。
授与所の正面から伸びる参道を進み、橋を渡った先に社殿があります。荒祭宮と同じく、正宮の参拝ルートからは少し外れた場所にあるので見逃さないように注意が必要です。
そのほかの別宮は境内にはなく、伊勢市内を中心に三重県内に点在しています。
最後はおはらい町を散策

お伊勢参りが終わったあとは、最後におはらい町へ。
内宮前の街はおはらい町とよばれお伊勢参りに来た観光客で大いに賑わっています。「おかげ参り」といって江戸時代に一般庶民のお伊勢参りが流行すると、商店や飲食店が軒を連ねるようになりました。現在でも街路沿いに妻入りの日本家屋が軒を連ねています。
何の変哲もない日曜日だというのに、おはらい町は人だらけ。人々の波をかき分けていかないと先に進めないような賑わいです。お伊勢参りが終わった旅人はここで名物を味わったりお土産を買ったりします。もちろんこちらが目当ての人も多いでしょう。

おはらい町のなかでも「おかげ横丁」と呼ばれるエリアはとても人気。
江戸や明治の建築を再現したレトロな街並みに、物産店や飲食店が集まっています。迷路のような路地も面白いですし、各店舗に飾ってある横丁猫と呼ばれる招き猫を探すのも面白いです。
今回は入館しませんでしたが、おかげ座神話の館という施設もあって日本神話を映像と和紙人形で紹介しています。伊勢神宮に行って神話の世界に興味を持った方は是非。

おはらい町はとても混んでいるので、少し繁華街を離れて五十鈴川沿いの手こね茶屋へ。
伊勢名物のてこね寿司と伊勢うどんのセットを注文しました。手こね寿司は志摩の漁村がルーツとされる郷土料理で、醤油漬けにされた刺身を酢飯にのせているのが特徴。伊勢うどんは京うどんと同じくコシのない柔らかいうどんです。関東の民からするとやわらかいうどんはあまり好みではなかったので、手こね寿司が美味しかったです。寿司桶にに入っているのも可愛くていいですね。
再度、おかげ横丁に戻ってお土産を購入してからバスで伊勢市駅に戻ります。

帰りは伊勢市駅から特急の伊勢志摩ライナーに乗車します。
イルカのような車体な印象的ですが、車内も座席が鮮やかだったり観光特急らしい車両です。伊勢市駅から終点の近鉄名古屋駅までは約80分ほど。
最後の下車駅で乗車券は回収されますが、青色の「まわりゃんせ」パスポートは記念に持ち帰ることができます。日付も印字されていますし、どこの施設に入館したのかも確認できるので後で見返しても面白いかもしれません。

「まわりゃんせ」を使って2泊3日で伊勢志摩エリアを巡る旅もこれにて終了。
電車移動は特急が利用でき、現地での支払いもほぼ発生しない「まわりゃんせ」の旅は快適でした。初めての伊勢志摩旅行で欲張って色々な場所を巡りたい場合にはとてもおすすめなきっぷです。