
秩父今宮神社は秩父市内にある神社です。
同じく市内にある秩父神社よりも知名度では劣りますが、歴史も古く神仏習合の面影を残した珍しい神社。古代に霊水への自然信仰から始まったとされています。時代とともに神道、仏教、修験道と習合して、秩父地域の複数の霊場を管理する一大勢力へと成長しました。江戸時代には今宮坊と総称して最盛期を迎えますが、明治以降は神仏分離令により分離・解体されて現在に至っています。
- 秩父三十四観音霊場発祥の地
- 神仏習合を色濃く残す珍しい神社
- 御神木(八大龍王神)は樹齢1,000年以上
玉石を敷いた明るい境内には八大龍王を祀る龍神木や霊水の湧く龍神池など緑も豊か。御祭神以外にも仏教や修験道の神仏を祀るお堂も点在しています。観光客は比較的少ない神社ですが、参拝・見学時のみどころは多く、神社好きの方にはおススメです。

秩父今宮神社では多くの祭神を祀っています。
まず、境内でもっとも大きな建築の本殿。ここでは伊邪那岐、伊邪那美大神、須佐之男大神、八大龍王神、宮中八神を祀っています。現在の本殿は2019年に竣工したばかり。旧社殿は1709~1710年頃(宝永年間)に建てられ、1964年に秩父市内の聖神社に寄贈。現在は聖神社の社殿として現役です。
そのほか小さな社殿や祠は境内各所に点在しています。境内の東側には役行者を祀った役尊神祠、小高い場所には稲荷社。武甲山の伏流水が湧く龍神池のほとりには弁天社が設けられています。参道入口付近の樹木の洞に祀った龍上観音をはじめ、観音像を祀っている場所が境内にいくつかあるのがポイントです。
西側に目を向ければ、菅原道真公を祀った天満宮があります。社殿は2020年に竣工した新しいもので、社殿のとなりには撫で牛の像も鎮座しています。

境内中央にあるのが龍神木と呼ばれるケヤキの巨木です。
「千年欅」と呼ばれていることからも、樹齢は推定で1,000年以上。埼玉県の天然記念物にも指定。太い幹から5本に枝を広げた姿が印象的で、幹の洞に御祭神の八大龍王を祀っています。江戸時代には武士がこのケヤキに馬を繋いだことから「駒つなぎの欅」とも呼ばれているそう。

秩父今宮神社は時代とともに多くの神仏と習合してきた歴史があります。
まずは、有史以前の古代に信州諏訪の勢力が当地の霊水に水神を祀ったことが始まりとされています。この霊水は武甲山の伏流水と考えられ、時代が下って神道が成立すると、国生みの神として知られる伊邪那岐・伊邪那美の2柱が祀られるようになります。
7~8世紀頃には山岳宗教である修験道が隆盛。その中心人物である役行者が秩父に訪れ、霊水のほとりに八大龍王を合祀します。八大龍王とは仏教を守護する八体の龍王で、特に観音菩薩を守護する存在として知られています。その八大龍王は次に天皇を守護する宮中八神と習合し、現在の秩父今宮神社の基礎ができました。この頃から八大宮と呼ばれるようになります。
16世紀に入ると疫病が猛威をふるったため、1535年に京都で疫神を祀っている今宮神社から須佐之男大神を勧請して今宮神社が創建されます。現在、秩父今宮神社の名前の由来はここからきています。
その後は江戸時代にかけて、長岳山今宮坊と称して複数の神社や寺院を配下にするなど最盛期を迎えます。その中には秩父札所14番今宮坊や28番橋立堂など含まれていました。江戸時代には寺社巡礼のブームが起き、秩父は三十四観音霊場として大いに賑わったと伝えられています。











御祭神:伊邪那岐大神、伊邪那美大神、須佐之男大神、八大龍王神、宮中八神、役尊神(役行者)、聖観音神、宇迦之御霊神、弁財天、菅原道真公ほか
住所 :埼玉県秩父市中町16−10
最寄駅:秩父鉄道御花畑駅から徒歩15分
訪問日:2019年5月19日、2021年2月20日